近年、抗生物質をはじめとする抗菌薬が効かなくなる
「薬剤耐性」が世界中で拡大しています。
薬剤耐性とは、細菌が抗菌薬に対して耐性をもってしまい、抗菌薬が効きにくくなることです。
微生物からつくられた抗生物質や人工的につくられた化学物質を総称して「抗菌薬」と言います。
抗菌薬によって、細菌による多くの感染症の治療が可能になりましたが、
1980年以降、耐性菌が世界中で増えています。
耐性菌が増えると、抗菌薬が効かなくなるため、従来の治療で回復できた感染症の治療が難しくなり、流行や重症化のリスクが高まります。
さらには死亡に至ることもあります。
特に、乳幼児や妊婦、高齢者など、能力の弱い人は重症化しやすく非常に危険です。
現在、さまざまな種類の耐性菌が確認されており、
今後も抗菌薬の効かない感染症が増加することが予測されます。
このため、薬剤耐性が広がり続ければ、感染症の流行や重症化への対策が難しくなります。
薬剤耐性が拡大した原因の一つとして、抗菌薬の不適切な使用が挙げられています。
例えば、風邪をひいた時、抗菌薬をもらいに病院へ行った経験はないでしょうか。
しかし、抗菌薬は細菌を死滅させるための物なので、ほとんどの風邪には効果がありません。
風邪の多くは抗ウイルス薬などを使用するのが効果的です。
もちろん、風邪で体の抵抗力が弱っているときに細菌の感染予防として、医師から抗菌薬を処方される場合があります。
しかし、必要のない抗菌薬を使用すれば、耐性菌が出現する可能性が高くなります。
また、処方された抗菌薬を途中でやめるなど不適切に使用すると、細菌が生き残ってしまい、その中から耐性菌が出現することもあります。
そして、耐性菌が周囲の人に感染することで、薬剤耐性が広がっていくのです。
薬剤耐性の拡大を防ぐためには、抗菌薬を適切に使用することが重要なのです。
医師から指示された薬を症状が軽くなったからといって、
途中でやめたり、回数を減らすなどして使用したりすると、耐性菌を増やす原因となるため絶対にやめましよう。
医師や薬剤師の指示を守って、必要な場合に、適切な量を適切な期間、使用をこころがけることが大事です。
また、以前に処方された抗菌薬が残っていても、それを自己判断で飲まないようにしましょう。
似たような病気の症状でも、原因となる細菌が異なったりすると、耐性菌が出現する可能性があるからです。
さらに日ごろから、健康に気を付けることも大切です。
手洗いやうがい、マスクを着用するなど、感染症を予防していれば抗菌薬を使用する機会も少なくなります。
薬剤耐性をこれ以上広げないためにも、抗菌薬に対する正しい知識を持ち、適切に使用しましょう。
抗菌薬の使用などについて分からないことがあれば、かかりつけの医師や薬剤師に相談するなどするようにしましょう。
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