2015年10月8日木曜日

ニッポンの粗食を見直す-7。味噌汁


味噌汁は「発酵」という知恵から生まれたごはんの名脇役です。

ごはんに足りないものを補って、食生活に楽しい味つけをしてくれます。


ごはんには味噌汁を添えるもの。

誰もが知っている、和食(粗食)の定番スタイルです。


一見なにげないようで、これか実に賢い組み合わせなのです。

ごはんにただ一品、味噌汁をプラスするだけで、体に必要なものを摂収できます。


ごはんは日本人に、最も手に入りやすく、かつ体に適したエネルギー源です。

しかし、その成分のほとんどは炭水化物なのです。

体にとって必要なたんぱく質や脂質などは、ごはんだけでは賄いきれません。
 
そこで、私たちの祖先は豆や種実類を食べて、これらの不足分を補ってきました。

とりわけ画期的なのが、味噌をはじめと大豆の発酵食品の発明です。
 
大豆は秋から冬に収穫される作物です。

ある豊作の年、余った大豆を塩漬けにしておき、そこそこ腐敗したものを食べてみたところ、味噌になっていた………。
 
味噌、醤油、納豆といった発酵食品は、発明というよりも、恐らく大豆を保存する過程で偶然生まれたものではないでしょうか。

きっかけは偶然だったとしても、発酵食品の良さを見抜き、腐敗を発酵に変える知恵を、日本人は早い時期から持ち合わせていたようです。

味噌の元祖ではないかと言われると「未醤」の記録は、実に大宝律(701年)に残されています。

また、大豆のみならず、日本の各地には独特の発酵食品がたくさんあります。

湿潤温暖な気候と、カビや細菌、酵母菌などの微生物、そしてその土地でとれる食材を巧みに利用した発酵食品。

これらはまさに、風土によって育まれた食品といっていいでしょう。
 
こうした発酵食品の大きな魅力は、食べると善玉の腸内細菌が増える点です。

いうまでもなく便秘にも効果的です。

また、消化吸収率が抜群で、大豆の発酵食品では80%と、大豆そのものよりもはるかに高い数字です。

つまり、味噌の誕生により、大豆に含まれるたんぱく質や脂質を非常に効率良く摂取できるようになったのです。

そして、味噌をさらに進化させたものか味噌汁です。

味噌汁の具については、ルールは何もありません。おいしければ何を入れてもかまいません。
もちろん旬の野菜をふんだんに使えば、季節感を味わえます。
 
続いて「だし」にも注目したいですね。
煮干し、昆布、カッオ節などで取るだしには、動物性たんぽく質やミネラルが含まれます。

これらも、体にとって貴重な栄養素なのです。

そのうえ、食欲をそそる風味やうまみも加えてくれます。

このように味噌汁は、ごはんに足りないものを見事にカバーしつつ、食生活の幅を広げてくれます。まさに、ごはんの名脇役といえるでしょう。


ごはん同様、味噌汁は毎日食べるものだから、ちょっとこだわって、いい味噌だしを用意したいものです。

味噌には様々な種類かあります。地方色も強い傾向にありますが、家族みんなが食べるものだから、好みで選ぶといいでしょう。

ただ、最近では速醸法といって、大豆を十分に発酵させず、短期間で作っている味噌も少なくありません。

時間をかけてじっくり発酵させた本物の味噌とは、香りも味わい深さも違います。

香りが味噌の命ですから、多少値段は高くとも、本物を使うことをお薦めします。

だしは、できれば手作りしたいものです。
昆布とカツオ節のだしは、カツオ節を日本茶用のパックに詰めて使うと、後片づけに手間取りません。

―度に作り、塩を少し加えて冷蔵庫で保存しておくという手もあります。

だしの作り置きは、煮物やあえ物にもさっと使え、何かと重宝します。
 
朝の空気に漂う味噌汁の香りほど、心安らぐものがほかにあるでしょうか。

この香りを絶やさない限り、あなたの食生活に大きな間違いはないはずなのです。

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●出典:幕内秀夫「ニッポンの粗食 ごはんの基本レシピ」より

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