厚生労働省は1952年から毎年、約1万軒の家庭を対象に、食品に関するアンケートを行っています。
どのような食品を食べているのかを、詳しく聞き取ったものです。
そのデータを元に、
- 60年
- 75年
- 90年
- 2005年(現代)と、
それぞれ1週間、21食分の献立のレシピを管理栄養士と作り、実際に調理しました。
05年のメニューの一例は、朝食はトースト、クラムチャウダー、リンゴ。昼はうな井と付け合わせ。晩ごはんは豚のしょうが焼きなどだ。
90年は、05年のメニューとほとんど変わらない。
75年になると、どこか懐かしいメニューが並ぶ。牛、豚などの肉類が減って、海藻や野菜が増え、肉じゃがやおひたし、酢の物など、現代に比べ、和食らしいおかずが増える。
一方で、75年はオムレツやシチューなど、洋風の料理も食べていた。和洋を問わず、さまざまな
品目をまんべんなく食べていたのが特徴です。
60年は、おかずが少なく、ごほんの量が多い。全体的にいろどりが少なく、地味で味気ない印象です。
4つの年のメニューをそれぞれ混ぜ、粉砕し、乾燥させたものを、1ヵ月齢のマウスに8ヵ月間食べて、もらいました。
9ヵ月齢は、人間の40歳ぐらいに当たる。
その結果、最もはっきりした違いが見られたのは、内臓脂肪の量だった。
75年が一番少なく、現代が一番多かったのだ。
また、脂肪の量だけでなく、質にも大きな違いが見られた。内臓脂肪の組織を顕微鏡で見ると、現代に比べて、75年は細胞自体も小さかったのだ。
内臓脂肪からは、血圧や血糖値を上げる悪いホルモンが放出される。脂肪細胞が、大きくなればなるほど、体にさまざまな悪影響を与える。肥満、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどの原因になるのだ。
内臓脂肪が小さくなれば、スリムになるだけでなく、生活習慣病の発症も抑えられる。
つまり、1975年の食事は、健康にもダイエットにも効果的であることがわかったのだ。
その健康効果は、遺伝子レベルでも確認できた。
DNAマイクロアレイ(遺伝子の発現量の計測手法)でマウスの遺伝子を調べたところ、現代食に比べて、昭和50年の食事はストレス性が低く、糖質や脂質の代謝が活発になることが明らかになった。
特にUCP2という、熱の生産を促し、体のエネルギーを燃やす遺伝子が、多く発現していた。
これは代謝をよくする遺伝子である。そのスイッチがオンになるのだ。
UCP2は、75年は05年の2倍以上も発現した。75年の食事が最も肥満になりにくく、健康有益性が高いということを表している。
●出典は東北大学・准教授、都築毅 著
『昭和50年の食事でその腹は引っ込む』講談社+α新書
関連参照:
ビタミン・ミネラル活用事典
老化。焦げ・枯れ・錆びと
シニアからの栄養学
サルコペニア予防
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