2015年5月11日月曜日

スーパー和食-5。1日1個は卵を食べよう

昭和50年(1975年)は、今よりずっと多く卵を食べていたのだ。

卵は非常によくバランスのとれた、完全栄養食品である。


しかし、コレステロールが注目されるようになると、卵の消費は下り坂になった。

卵は、数ある食材の中でも、最も誤解を受けてきたものの一つだ。


「卵を食べすぎると、コレステロール値が上がり、血液がドロドロになる」

「コレステロール値が高めの人は、卵を食べてはいけない」
このように考えて、卵を控えている人も多いのではないだろうか。


コレステロールとは、一体何だろう?
コレステロールは脂質の一種である。脂質というと、内臓脂肪、皮下脂肪など、悪いイメージを持たれがちだ。

しかしコレステロールは、脂質は炭水化物、タンパク質などと並んで、人間の体に欠かせない栄養なのである。
 
人間の体は、60兆個もの細胞の集まりだ。細胞の一つ一つは、細胞膜に包まれることで形を保っている。それらすべての細胞膜の材料になるのが、コレステロールなのだ。
 
また、コレステロールは女性ホルモン、男性ホルモンなどの原料になったり、血管の弾力性を高め、丈夫にしたりする働きもある。

しかし、そもそもコレステロール値の上昇と、卵には何の因果関係もない。それを証明する、いくつかの実験がある。

1981年、日本で、コレステロールに関する興味深い研究結果が発表された。

健康な成人に、1日5~10個の卵を5日間連続して食べ続けてもらい、被験者の血中コレステロールを調べた。その結果、毎日10個ずつ食べた人でも、血中コレステロールの値はほとんど変化しないことがわかったのである。
 
98年に行われた、国立健康・栄養研究所による実験でも、同じ結果だった。
1日10個以上の卵を、10日間以上食べ続けても、被験者の血中コレステロール値は上がらなかったのだ。
 
また、2002年にアメリカで発表された、1万人を対象に、16年間行われた追跡調査でも、毎日卵を食べている人と、食べていない人で、心臓病・動脈疾患・脳梗塞の発症率に違いは見られなかった。

現在世界では、卵に血中コレステロール値への影響はなく、むしろ良質のタンパク質やビタミンなどの供給源であることが祈たな常識になりつつある。

75年に多い、目玉焼き、出汁巻き卵、オムレツ、スクランブルエッグなどは、まさに理想的な朝食メニューなのだ。

江戸時代、卵は庶民にとって贅沢な食材であり、当時の消費量は1人1年あたり10個にも満たなかった。江戸末期に書かれた記録書、『守真謾稿』によれば、かけそばがI杯16文の時代に、ゆで卵が1個20文で売られていたという。

今の価格で考えると、ゆで卵1個が500円以上したということになる。
家庭で食べるよりも、病人のお見舞いや贈答品、男性から女性へのプレゼントとして買い求められることが多かったといいます。
 
卵が日本の食卓に普通に登場するようになったのは、昭和30年(1955年)以降だ。品種改良や生産技術の向上で、供給が安定し、庶民にも手に入れやすい価格になったことが大きい。
 
よく、「巨人、大鵬、卵焼き」と言われるように、卵は高度経済成長期の、そして豊かな日本社会の象徴だったのである。

60年代に年間1人約100個だった卵の消費量は、75年には約280個と急激に増えている。しかし、現在は「卵はコレステロール値を上げる」などの誤解が広まったこともあり、減少傾向にある。
 
それでも、世界的に見て日本人は卵を多く食べる国民だ。
年間1人あたりの卵の消費量はメキシコについで、日本は第2位である。

このことは日本が世界でもトップクラスの長寿国であることと、大いに関係かある。
卵には、コレステロール対策には一番と言われるオレイン酸が多く含まれている。オレイン酸は、血中の悪玉コレステロールだけを下げる優れた作用を持つ。

卵はコレステロール値を上げるどころか、下げてくれるのだ。
脂質、たんぱく質などがバランスよく含まれた、完全栄養食品である卵を、現代人はもっと食べてもいい。

卵は、1日I~2個は食べるべきだ。

-------------

●出典は東北大学・准教授、都築毅 著
『昭和50年の食事でその腹は引っ込む』講談社+α新書


関連参照:
スーパー和食。調査方法
ビタミン・ミネラル活用事典
老化。焦げ・枯れ・錆びと
シニアからの栄養学
サルコペニア予防  
つまらんことでしょうか

↓クリックをお願いします。


0 件のコメント:

コメントを投稿