1975年は、今と比べて「海藻」を多く食べていた。
海藻は、その成分のほとんどが食物繊維である。
炭水化物や脂質などの栄養は、消化によって分解・吸収され、体のエネルギーとなるが、
食物繊維は、人間の消化酵素では分解できない。
つまり、食べても体に吸収されることなく、そのまま便になって体外に排出されてしまうのだ。
そのため、長い間、「食物繊維は栄養にならない不必要な物質」と言われていた。
食物繊維の健康効果、ダイエット効果が広まったのは、1972年に発表された、イギリスの医師、デニス・バーキット博士の論文による。
バーキット博士は、欧米人に比べ、アフリカの先住民に大腸がん、糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病が少ないのは、食物繊維を大量に摂っているからであるという説を発表し、
「すべての生活習慣病の根源は、20世紀の食生活が、食物繊維を失ったことにある」
と、現代人の慢性的な食物繊維不足に警鐘を鳴らした。
その後、多くの研究によっても、食物繊維は健康に欠かせない物質であることが明らかになっている。
食物繊維は、体の栄養にはならない。しかし、口から入り、消化器官を通り抜ける際に、さまざまなよい働きをしてくれる。
まずは、便秘解消効果である。食物繊維が便のかさを増し、排便をスムーズにするため、ポッコリと出たお腹を引っ込め、美肌にも有効だ。
また、海藻に含まれる水溶性食物繊維には、血中コレステロール値を下げる効果が認めら
れている。
ワカメやコンブに多いアレギン酸は、コレステロールが体内に吸収されるのを防ぎ、海藻のヌルヌル成分、フコイダンは、腸の中の余分なコレステロールや老廃物を包み込んで、体外に排泄する作用がある。
さらに水溶性食物繊維は、胃の中で水を吸収して膨らむので、満腹感をもたらし、食べすぎを抑えることができる。腹持ちがよく、カロリーの低い海藻類は、まさにダイエットに最適な食材なのである。
海藻の大きな魅力の一つは、価格が安く、一年を通して手に入りやすいことだ。
出汁取りや煮物、おでんの材料になるコンブ。寿司に欠かせない海苔。天草から作られる
寒天やところてん。ワカメ、モスク、メカブなども、味噌汁の具、酢の物、和え物としてよく使われる。
また、ヒジキは鉄分を多く含むため、多くのマラソン選手や実業団の食事にも取り入れられている。
シドニー八輪マラソン金メダリストの高橋尚子選手は、現役時代、1日に納豆4バックと、ボウルに山盛りのヒジキを食べて貧血を防いでいた。また、福士加代子選手は、海外遠征の際にも、必ず日本からヒジキを持って行くという。
さまざまな健康効果のある海藻だが、実は世界で食用の習慣があるのは、
日本のほか、韓国、中国沿岸部、スコットランド、アイルランド、チリなど、ごく一部の国だけだ。
欧米では、食用にする習慣が少ないので、海藻はseaweed(海の雑草)と呼ばれ、ゴミとして処分されているという。
日本での海藻の歴史は古く、縄文時代から食べられていた。
健康食としての和食の底力は、「海藻」にあると言っても過言ではない。
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●出典は東北大学・准教授、都築毅 著
『昭和50年の食事でその腹は引っ込む』講談社+α新書
関連参照:
スーパー和食。調査方法
ビタミン・ミネラル活用事典
老化。焦げ・枯れ・錆びと
シニアからの栄養学
サルコペニア予防
つまらんことでしょうか
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