砂糖には、健康に役立つ効果がたくさんある。
まず、
脳への栄養補給だ。
頭を使ったり、運動や肉体労働などで体力を消耗したりすると、肝臓に蓄積されていたエネルギー(グリコーゲン)が底をつき、血液中に糖分を補給できなくなる。
そのため、血糖値が低下し、「疲れ」を感じてしまうのである。
特に、脳はブドウ糖だけをエネルギーとしているため、血糖の不足は思考力、集中力の低下につながるのです。
ごはんやイモ類など、甘いもの以外の炭水化物でも、糖の補給は可能だが、それらの食品は、体内でエネルギーに変換されるまでに長い時間がかかるのだ。
一方、砂糖は数分で血液中に届き、血糖値を回復させる。
また砂糖にはストレスの影響を弱める作用もある。ストレスを感じると、脳内にストレストレスタンパク質が発現する。
砂糖を摂取すると、このストレスタンパク質の発現が和らぐのだ。
疲れたとき、甘いものを食べるとほっとするのはこのためだ。
だから、情緒を安定させるためにも、糖分は欠かせない。
喜怒哀楽などの感情は、脳で分泌される、
ドーパミンとセロトニンという神経伝達物質によって司られている。
ドーパミンは脳を覚醒させ、集中力を高める作用、セロトニンは脳をリラックスさせる作用がある。
ドーパミンとセロトニンは、車で例えるならば、
アクセルとブレーキのようなものだ。
どちらかが多すぎたり、少なすぎたりすると、うまく働かない。
集中とリラックス、緊張と弛緩、両方をバランスよく保つことが大切である。
ドーパミンの主な原料となるのは、タンパク質から作られるアミノ酸だ。よく、受験生は試験の前に、ゲン担ぎとしてカッ丼を食べるが、豚肉の中に含まれるアミノ酸が集中力をアップさせるため、理にかなった「勝負メシ」と言える。
しかし、ドーパミンが多すぎると、感情を制御できなくなってしまう。カッとしやすく、攻撃的になったり、何気ないことで、苛立ちや緊張を感じたりする。
情緒の安定を保つには、興奮にブレーキをかけるセロトニンが不可欠だ。
ブドウ糖には、脳内にセロトニンの分泌を促す効果がある。
砂糖はかって精神安定剤としても利用されていた歴史があり、その効果は科学的にも証明
されている。
砂糖は、決して悪者ではない。
食事の中でうまく取り入れれば、心と体の健康に大きく役立つのだ。
巷のダイエットには、砂糖を極力控えるものが多い。中には、「砂糖、お菓子類は一切禁
止」というものもある。
しかし、先ほど述べたように、甘いものを食べたくなるのは、体の自然な欲求だ。多くのダイエットが難しい理由の一つに、
本能を押さえつける、この厳しいルールがある。
実際、「ダイエットを始めてから、スイーツが無性に食べたくて仕方なくなった」「お腹いっぱい食べても、デザートがないと物足りない」「一日中、甘いもののことばかり考えてしまう」という人は多い。
甘いものがやめられないのは、意志が弱いからだと、自分を責め、精神的に追い込まれてしまう人も少なくない。
甘い物が一切食べられないというのは、人間にとって非常に辛いことだ。
砂糖への欲求は、それほど強く、激しいものなのだ。
砂糖を徹底して排除し、お菓子類を一切摂らないのは、非常に強いストレスになって当然である。
砂糖は、決して悪者ではない。脳や体のエネルギー源となるだけでなく、心を落ち着けたり、ストレスを和らげたりする作用もあるのだから。
しかし、薬も過ぎれば毒になる。
砂糖は肥満の原因ではないといっても、ケーキやクッキーなど、砂糖とバターや生クリームをたっぷり使ったお菓子を食べすぎれば、当然カロリー過多になって、太ってしまう。
また、砂糖の過剰摂取により、必要以上に血糖値が高い状態が続くと、体は血糖値を下げようとして、大量のインスリンを放出する。インスリンは、糖を脂肪として蓄えようとする。
内臓脂肪が溜まり肥満になると、生活習慣病にかかりやすくなるのはこれまた、いうまでもないことなのである。
関連参照:
老化。焦げ・枯れ・錆びと
シニアからの栄養学
中高年からの筋肉作り
サルコペニア予防