ごはんに関する俗説に「
ごはんは太る」というものがあります。
総理府の
『食生活・農村の役割に関する世論調査(昭和62年)』
を見ると、昭和53年には29.6%、最近は減ったとはいえ、
18.4%(昭和62年)もの人が「ごはんは太る」と考えているのです。
ところが、これとは逆に深刻な肥満、心臓病大国
アメリカなどでは、
ご飯を食べて肥満を解消しようとする動きが出てきているのです。
それは、1982年にアメリカの農務省および厚生省の出した
『栄養とあなたの健康--アメリカ人のための食事指針』の影響が少なくないように思われます。
この指針の要点7項目は次の通りです。
①バラエティに富んだ食品をとろう
②望ましい体重を維持しよう
③脂肪、飽和脂肋、コレステロールをとり過ぎないようにしよう
④デンプンと食物繊維をしっかりとろう
⑤糖分をとり過ぎないようにしよう
⑥ナトリウムをとり過ぎないようにしよう
⑦アルコールを飲むなら、ほどほどに飲もう
つまり、
「肉類や砂糖類を減らし、もう少しデンプン質の食品を食べて体重を維持しよう」
といっているわけです。
しかも日本人には極端な肥満や心臓病が少ないということもあって、米を見直すアメリカ人が増えているといいます。
テレビの料理番組でも米を使った料理が増え、スーパーマーケットなどでも米を置くところが増えています。
現在でもまだ、肥満を防ぐには「ご飯を減らそう」などという日本とは、まさに逆の動きがでているわけです。
なぜ、両極端の考え方があるのか。
お国の事情、民族差などもあるかも知れませんが、もっと大切なことは、
米(こめ)には肥満をもたらす因子も、肥満を予防する因子もないということなのです。
それは、米だけではなく、ダイエット食品として人気のあるさまざまな食品にも同じことがいえます。
そもそも太るということは、だれでも分かるように、食べる量(摂取エネルギー)が、運動量(消費エネルギー)を上回るために起こることなのです。
つまり、問題の一つに現在の社会生活(仕事など)があまりにも機械化され、自動車社会になり、あるいは頭脳労働か増え、極端に体を使うことが減っていることがあげられます。
そして、「孤独な豚は太れない」、あるいは「さびしい女は太る」という言葉があるように、都会の孤独、人間関係の疎外感というのだろうか、精神的充足感を
食べることで解決しようとする面もあります。
つまり、食べ過ぎれば太ることはわかっているのに食べてしまう、その原因が生活そのものにあるということなのです。
例えば、人にとって一日に必要なエネルギーを100とします。
効率のよい食べ方をすれば100、十分だが、効率が悪ければ100食べても体内では30か40しか利用されないのです。
つまり、60から70は不足しているわけです。
そうなると生命を維持するために、自分では意識しなくても、ついつい何かを食べることによって補おうとすることになってしまうのです。
それは健全な生理作用であって、何ら不思議なことではありません。
効率のよい食べ方をするために大切なのが、まさに、ご飯を中心とした日本人の体質に合った食生活であり、微量栄養素(ビタミン、ミネラル類)をきちんととることなのです。
つまり、私たち日本人の体を
石炭ストーブに例えるならば、石炭を入れるのが当然であり、石油やガス(肉、乳製品、油など)を入れても、うまく燃えるはずがないのです。
それどころか危険でさえあります。
そして、いくら石炭を入れても酸素(微量栄養素=ビタミン、ミネラル類)を入れなければ、
やはり燃えるはずがないのです。
これではいくら経っても暖まらないので、また石炭を入れることになる。
それが慢性的な過食の原因だといえるのです。
このように、肥満という問題は、たしかに食生活が大きな比重を占めていると思われます。
食生活を変えることによってスマートになる人もいるし、運動をすることによってうまくいく人もいるでしょう。
しかし、わかってはいても物理的にも精神的にも実行するのが難しいのが、現代社会ではないでしょうか。
まさに、
生活全体の問題であるという点に難しさがあるわけです。
そのように考えてみれば、たった一つの食物、「米」は太るとかやせるなどという問題ではないことが分かるでしょう。
実際には、「粗食」の主役であるご飯をきちんと食べることによって太るということはほとんどないのです。
むしろ、きちんと食べることによって、スマートになる場合がほとんどなのです。
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●出典:幕内秀夫「粗食のすすめより
関連参照:
和食・粗食を考える
中高年からの筋肉作り
転ばぬように、歩き続ける方法
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