長時間ギプスを付けていたあとにはずすと、その下の筋肉はおそらくすっかりしぼんで弱々しくなっているはずです。
そうです、使われない筋肉はやせ細ってしまうのです。
では、身体活動と運動の違いはなんでしようか?
どちらも3つの「M」を含みます。
3つの「M」とは、ムーブ(Move)、筋肉(Muscles)、代謝(Metabolism)です。
そして、身体活動とは、家事やマラソンまで、筋肉の収縮と代謝の増加を伴うあらゆるからだの動きのことを指します。
そのなかでも、健康や体力の増進などの目的で行われる運動は、いねば、特別な身体活動と言えます。
身体活動も運動も、恩恵をもたらします。
もしも、両方とも生活の一部になっているなら、なおさらのことです。
たとえば、ウォーキング、あるいは、自転車に乗って、通勤するというように、毎日の身体活動に運動を取り入れると、健康によいばかりか、妊娠への近道になるだけでなく、通勤費用を節約し、さらには、時間の節約にもなり、大気汚染や地球の温暖化の防止に一役買うことになり、一石何鳥に
もなります。
ここでいまや古典ともいえる、「ダラスー・ペッドレスト・トレーニングースタディ」を紹介します。
1966年の夏、5人の健康で若い男性が3週間、夏休みをベッドの上で過ごすという実験が行われました。
21日間、24時間を横になって過ごしたのです。男性たちが実験を終えて立ち上がったとき、彼らはすっかり弱々しくなっていました。
実験を開始したときよりも、5人とも心拍数は上がり、高血圧になり、太ったにもかかわらず筋肉は落ち、心臓は弱っていました。
まるで、3週間で20年も年をとってしまったかのようでした。被験者たちはその後8週間の運動プログラムを行いました。
その結果、横になっていたことによるからだのダメージを回復させただけではなく、実験前に比べて、より健康的になったことから、きちんと運動をすることが、若者にとって恩恵をもたらすことがわかりました。
30年後、研究者は当時被験者だった5人の追跡調査のため、ふたたび同様の実験を行い、寝たままで過ごしてもらいました。
すると全員に平均で約22キロの体重増加が見られ、筋肉よりも脂肪が増え、心肺能力は衰えていました。
ところが、6ヵ月のプログラムでウォーキング、ジョギング、サイクリングなどを行ったところ、健康状態の改善がいくつか見られました。
少なくとも心臓の機能に関しては、心拍数、血圧、心臓のポンプ機能などが、若い頃に3週間横になって過ごした夏より前の状態に回復したのです。
この再実験には、12人の年配の男性と女性(平均年齢67歳)も同時に参加しており、彼らもまた同様の実験により、若い年齢の被験者よりもさらに悪い健康状態に陥リました。
たとえば、若い被験者が1ヵ月で落ちた筋肉よりもさらに多い筋肉が、10日間でおちてしまい、特に脚の筋肉がもっとも弱くなりました。
この実験によって、身体活動を行わないとどうなるか、それだけではなく、運動によって回復する力がからだに備わっているということも、わかるでしょう。
毎日の水泳やランニング、ウォーキング、ピラティスは、心臓病や糖尿病、骨粗髪症、などを予防してくれるのです。
アメリカ公衆衛生局長官による画期的なレポート、『フィジカルーアクティビティーアンドーヘルス』
では、運動や身体活動がもたらすものとして以下のものを挙げています。
- 長生き、および健康な生活の助けとなる
- 心臓病やそれに付随する症状、高血圧や高コレステロールを予防する
- 大腸がんや乳がんなどを含む、ある種のがんの予防につながる
- 2型糖尿病を予防する
- 潜行性の骨粗殺症を予防する
- お年寄りの場合、転倒するリスクが減る
- うつや不安の感情を和らげ、気分を落ち着かせる
- インポテンツを予防する
- 体重をコントロールする
「妊娠」はこのリストには入っていませんが、入れるべきであると考えられます。
一方で、運動しすぎると、逆に健康を害する可能性があることも付け足しておいたほうがよいでしょう。
関連参照:
シニアからの栄養学
中高年からの筋肉作り
サルコペニア予防
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