プレーリーハタネズミは、動物では珍しく一雌一雄の関係を形成します。
アメリカのフロリダ州立大学のモハメド・カバジ博士らは、その行動を決定つけているのはエピジェネティクスの影響ではないかと考察して、実験を重ねました。
そして、2013年6月「ネイチャー」に興味深い論文を掲載しました。
報酬や喜びへの反応強化は、脳の中隔側座核と呼ばれる部分が担っています。
そこで、プレーリーハタネズミのこの部分に、ヒストンの脱アセチル化を抑制する薬を与えました。
これによりヒストンのアセチル化が促進され、遺伝子のスイッチがオンの状態になります。
すると、プレーリーハタネズミの中隔側座核内では、恋愛ホルモンとも呼ばれるオキシトシンやバソプレシンの受容体の増加しました。
ただ、実際では薬を与えるだけでは変化を起こすことはできません。
起こすためには薬とともに6時間の共同生活が必要であったというのです。
愛情を育む環境が必要で、愛情や慈しみは、遺伝子のふるまいまで変えてしまうのです。
また、摂取する食べ物によっても、エピジェネティックな変化が起こることが報告されています。
「アグーチイエロー」と呼ばれる系統のネズミは、遺伝子の中に余分なDNA断片があるため、肥満体で体毛が黄色いのが特徴です。
このネズミに通常の食餌を与えると、
黄色い体毛の子供が生まれますが、ビタミンB12、葉酸、コリン、ペタインなどの栄養素を妊娠前・中・後期に与えると、体毛が褐色のやせた子供が生まれます。
また、面倒見の良い両親に育てられた子ネズミは、そうでない子ネズミに比べ優しく、母親になっても面倒見のいいネズミになることがわかっています。
面倒見のいい両親に育てられた子ネズミの脳は糖質コルチコイド受容体のメチル化が少なくなっていました。
つまり、愛情が遺伝子にも影響を与え、エピジェネティックな変化により、子ネズミに対して優しくしていたのです。
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